可愛い服があるから着ようよ、とエオお姉さんから新しい服をもらった。
髪に合うよう赤の色を選んでくれた。嬉しい。
エオお姉さんも日記を書き始めたらしい。
ペオズさんがそうするよう勧めたようだ。 わたしにもいってきたが、エオお姉さんが日記を書く理由はなんだろうか?
疑問に思いながら外を眺めていると、ちょうどペオズさんが部屋に来た。 そのまま疑問を口にすると、自分を知る手がかりになるからだ、と短く返ってきた。 確かにこの日記を書くようになってわたしはわたしのことを知るようになった。 まるで他人事のようだが実際にそうだ。
同じ理由でエオお姉さんも書き始めたのなら、自分が何であるかわからなくなっているということだ。 わたしに何かできることがあるだろうか? おそらく、ないだろう。 わたしはわたしになる、それが優先事項だ。
人に好意を向けられないことと、人に好意を向けられても気づかないことのどちらが不幸だろう?
挨拶をするために部屋をあちこち巡っていた。 まだ、挨拶を交わしたこともないメンバーがいるから。 最初に話せなかったペルコッサお姉さんには、挨拶がしたかった。 そう思って、ペルコッサお姉さんの部屋に行くと、ラッテさんと話していた。
ペルコッサお姉さんとは挨拶ができたけど、ラッテさんとはうまくいかなかった、と思う。 何か薄い壁のようなものを感じる。 会話はできている。 できているけど、何かが隠れている気がする。
似たような空気をわたしは知っている。 あのチームにいた時に付き合っている人たちがいた。 その女のほうがわたしを邪険に扱ってきた。 男はわたしに比較的に好意的だったからだ。 その女に直接、何かされたわけではないが、少し距離を置いた話し方をされた。 距離を取らせたい空気を出していた。 それに近いものだ。
会話はそのまま、続いて飲み物をもらったり、夕食も一緒にご馳走になった。 わたしはラッテさんに壁を作っている。 だから、さん付けで丁寧語で呼んでいる。 こうやって書き起こして、わたしはわたしがどう思っているか知った。 わたしはどう向き合えばいいのかわかっていない。 無理に付き合う理由はきっと、無いと思う。 でも、誰かといる以上は他人に無関心ではいられない。 まわりを見て、考えて、感じ続けて、はじめて好きや嫌いと言える。
それが少しでもできるようになった手応えがある。 単なる楽しさとは違う面白さを感じている。
わたしは、まだ、走れる。
思い出して書く。
森を彷徨っているとエオお姉さんと一緒になった。 戦いを終えるといきなりの勧誘。 マスコットがほしい、といって来た。 前のチームより絶対にいい、そう思って、気がついたらパイドパイパーにいた。
森から帰ってきたエオお姉さんとわたしをアークスの警備隊の人達が待っていた。 お姉さんはわたしが先に話してくるから、その間にわたしの部屋で休んでいて、と言ってくれた。
部屋に行くとほかにチームの人達が、いた。 誰もいない、と思っていたから驚いた。 怖くは、なかった、と思う。
初めて会う人は怖い、けど、会うことは怖くはなかった。
キンドルお姉さんはここにいるのは良い人だって言ってくれた。 わたしはその言葉を信じて今もここにいる。
フィーアテお姉さんも優しくしてくれた。 ここならきっと、とあの時から何処かで思っていたんだって今なら思う。